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拭漆作業工程

拭漆(摺漆ともいう)は、欅・栃(ケヤキ・トチ)等の器物に漆を塗り重ねることで、木目をより一層美しく見せ、また使用時に汚れや傷が付きにくくするための技法である。

第01工程 木地調整

第02工程 木地固め(1)

第03工程 木地固め(2)

第04工程 目止め

第05工程 摺り漆(1)

第06工程 摺り漆(2)

第07工程 研ぎ

第08工程 摺り漆(1)

第09工程 摺り漆(2)

第10工程 摺り漆(3)


※この教室は初心者向けの教室であり、ここで紹介している技法は一例である。
※写真は平成23年度に開催のものである。


この教室では、ケヤキの文箱(白木地)に拭漆を施します。



第1工程 木地調整

木地表面には木材加工時の小さな傷などがあるため、木工用サンドペーパーで表面を滑らかにする。地味な作業だが、この最初の工程が最終仕上がりを大きく左右するため、丁寧にじっくり行う必要がある。
初めは目の粗いペーパーからスタートして、徐々に目の細かいペーパー(600番~800番)まで仕上げる。
研ぐ際には、木地の下に布を敷くなどして、作業中に木地を傷つけないようにしたうえで、あて木にペーパーを巻いて木目に沿って研ぐ。アール(円弧状)部分には丸いあて木を使うなど、研ぎ漏れがないように注意する。
ペーパー研ぎを終えたら、ガーゼに少し水分を含ませて、ペーパー研ぎで発生した研ぎカスを拭き取る。角部の研ぎカスは拭き取りにくいので、楊枝状の木片の先端にガーゼを巻いて研ぎカスを取り除く。

▲ペーパーで研ぐ ▲アール部分では丸いあて木を使う

▲研ぎカスをガーゼで拭き取る ▲楊枝状の木片を使い角部も取り除く

第2・第3工程 木地固め

ここでは木地に漆をしっかり浸透させて、木地を強固にすると同時に、今後の工程における吸い込みを止める。
1度目は生漆(下地漆)をテレピン油で7~10倍に希釈したものを木地にたっぷり塗布する。木地が漆をどんどん吸い込むので、塗布量が少なかった場合は更に追加して、十分に吸い込ませる。
塗布後5~10分ほど吸い込みを待った後、ガーゼで丁寧に拭き取る。その際、両手にガーゼを持ち、手が直に塗面に触れないようにする。角部は木ヘラなどを使って拭き取るなど、拭き残しに注意する。拭き取り後は、漆風呂に入れて乾かす。
2度目は下地漆をテレピン油で4~5倍に希釈したものを木地にたっぷり塗布するが、1度目ほどは吸い込まなくなっている。

▲たっぷりと漆を塗布 ▲ガーゼで拭き取る

▲角部はヘラを使って拭き取る ▲木地固めが乾いた状態

第4工程 目止め

今後の工程で仕上げを滑らかにするため、ここで目止めを行う。
目止めには、砥の粉を水練りした後、下地漆を混ぜて(砥の粉:下地漆=2:1)練ったサビ漆を用いる。
ガーゼに付けたサビ漆を、木目に摺り込むようにしっかり力を入れて行う。その後すぐにガーゼで余分なサビ漆を拭き取る。サビ漆は粘度が大きく拭き取りにくいため、この作業は、面全体を一気に行うのではなく、同一面を小さな面積に分割して、「摺り込んでは拭く」という作業を繰り返す。

乾いた後、拭き残ったサビ漆を、ペーパー(600~800番)で軽く研いで取り除く。この時、研ぎ過ぎないように注意する。

▲水練りした砥の粉(粘土状)と下地漆 ▲サビ漆を木目に摺り込む

▲目止めが乾いた状態 ▲ペーパーで余分なサビ漆を研ぐ

第5・第6工程 摺り漆

木地に漆を塗布し、漆を拭き重ねる。
1度目は下地漆をテレピン油で約3倍に希釈したものを刷毛で塗布する。目止めにより、漆をほとんど吸い込まなくなっているので、少量の塗布に抑える。
摺り込みには、ガーゼで力を入れて漆を延ばし、拭きの均一化と拭き取りを同時に行った後、次に新しいガーゼに換えてきれいに拭き取る。その後、漆風呂へ入れて乾かす。
摺り込み作業は力を入れて行うため、木地の向きを変えて作業しやすい方向で行う。また爪などで木地を傷つけないように注意する。
2度目は下地漆をテレピン油で約2倍に希釈(下地漆:テレピン=1:1)したものを塗布する。

▲下地漆とテレピンを混ぜる ▲器面に漆を塗布

▲ガーゼで拭き取る ▲摺り漆が乾いた状態

第7工程 研ぎ

ここで表面を平滑にするとともに、次回以降の漆との密着性を高めるため、サンドペーパー(800~1000番)で全体を軽く研ぐ。ここで研ぎ過ぎると、これまでの塗膜までも取れてしまうので注意する。また角部は力が入りやすいので、特に注意が必要である。

▲ペーパーで研ぐ ▲ペーパーで研ぐ

第8~10工程 摺り漆

さらに漆を拭き重ねるため、第8工程では第6工程と同じように下地漆をテレピン油で約2倍に希釈したものを漆刷毛で塗布する。(第6工程を参照)
これまでの摺り込みにより、木地は漆を吸い込まなくなっているので、薄く延ばせる量に抑える。ここで漆をつけすぎても拭き取り作業が大変なだけで、漆をムダに消費してしまうことにもなる。
第9・第10工程の摺り込みには、下地漆を原液のまま漆刷毛で薄く延ばしながら塗布する。そしてガーゼでしっかり力を入れて漆を摺り込みながら、拭きの均一化と拭き取りを同時に行い、次に新しいガーゼに換えて残っている漆をきれいに拭き取った後、レーヨン紙で拭いてから乾かす。この最終の拭き上げの際には、両手にレーヨン紙を持ち、木地を持ち上げて全体を拭き取った後、そのまま漆風呂に移す。(レーヨン紙は、ホコリが出ず、表面が滑らかなため、均一に延ばすことができる)
摺り漆の回数を重ねるにつれて表面のツヤが増してくる。丁寧に仕上げる場合は、再び研いでから数回拭き重ねる。

▲漆刷毛で下地漆を摺り込む ▲ガーゼで摺り込みながら、拭き取る

▲レーヨン紙で仕上げ拭き ▲摺り漆の乾いた状態